人は誰でも、過去を抱えて生きています。

楽しかった思い出。

嬉しかった出来事。

忘れられない出会い。

そういった温かな記憶もあれば、その反対もあります。

失敗したこと。

悔しかったこと。

傷ついたこと。

思い出すだけで嫌な気持ちになる出来事。

できれば無かったことにしたい過去もあると思います。

私もそうです。

ふとした瞬間に昔の出来事を思い出し、今さら腹が立ったり、悲しくなったりすることがあります。

もう終わったことのはずなのに、なぜか頭の中に浮かんできます。

過去に出会った誰かが、何年経っても心の中に現れることもあります。

できれば忘れたい。

できれば消えてほしい。

そう思うこともあります。

けれど、どれだけ消そうとしても、なかなか消えてくれません。

昔は、そういう感情を整理しなければならないと思っていました。

未処理の感情は処理しなければならない。

過去の傷は癒さなければならない。

そんなふうに考えていた時期もあります。

けれど、長く生きていると、少し考え方が変わってきました。

人の人生には、きれいに整理できるものばかりではありません。

答えの出る問題もあれば、答えの出ないまま終わる問題もあります。

納得できることもあれば、最後まで納得できないこともあります。

それらを全て解決することは、もしかするとできないのかもしれません。

だから最近は思います。

無理に消そうとしなくてもいいのではないかと。

無理に整理し切ろうとしなくてもいいのではないかと。

過去の失敗も。

悔しかった出来事も。

思い出すと嫌な気持ちになる記憶も。

全部そのまま抱えながら、人は生きていくのかもしれません。

そして、それは決して悪いことではないと思うのです。

傷跡が残るように、心にも痕跡は残ります。

それは生きてきた証でもあります。

消えないものがあるからこそ、人は人なのかもしれません。

だから私は、消えないものと戦うのを少しやめようと思います。

消そうとするのではなく、抱えながら生きていこうと思います。

きっと多くの人が、そうして生きているのだと思うからです。