誰にでも、頭の中に住んでいる人がいるのではないでしょうか。

もう何年も会っていない人。

できれば思い出したくない人。

あるいは、忘れられない人。

ふとした瞬間に、その人が頭の中に現れることがあります。

何かきっかけがあったわけでもないのに、急に思い出すことがあります。

そして、そのたびに嫌な気持ちになったり、腹が立ったり、悲しくなったりすることもあります。

私もそうです。

昔は、そういう人を頭の中から消したいと思っていました。

忘れようとしたこともあります。

考えないようにしようとしたこともあります。

けれど、どれだけ消そうとしても消えてくれませんでした。

思い出したくないと思うほど、なぜかまた出てきます。

そして、ある時思いました。

消えないものは、消えないのかもしれないと。

頭の中のあの人は、きっと私の人生の中で何かを残した人なのでしょう。

良い意味かもしれません。

悪い意味かもしれません。

どちらにしても、私の心に痕跡を残した人だからこそ、今でも時々現れるのだと思います。

だから最近は、無理に消そうとすることをやめました。

また出てきたな。

また会ったな。

それくらいに思うようにしています。

頭の中にいるその人と戦うことをやめました。

だって、出てくるものは出てくるのです。

何年経っても出てくるのです。

それならば、消そうとし続けるよりも、その存在ごと抱えて生きていく方が自然なのかもしれません。

人生には、忘れられることもあります。

けれど、忘れられないこともあります。

消えていく人もいます。

けれど、ずっと心の中に残り続ける人もいます。

きっと多くの人が、そんな存在を抱えながら生きているのでしょう。

これから先も、頭の中のあの人は時々現れるのだと思います。

けれど、それでいいのだと思います。

それもまた、自分の人生で起こった出来事だからです。

消そうとしなくていい。

追い出そうとしなくていい。

ただ、「また来たな」と思いながら、生きていけばいい。

人生とは、忘れることではなく、抱えながら歩いていくことなのかもしれません。